予防と健康管理ブロックレポート
1、はじめに
授業で、職業とうつ病、石綿による中皮腫についてのビデオを見て、どちらも今、問題になっていることだと感じました。
そこで、私は、職業とうつ病に関連している次のキーワードをもとに考えてみます。
2、選んだキーワード
性格とストレス
3、選んだ論文の概略
@実地医家に必要な旅行医学-旅行者血栓症以外の機内で起こりやすい疾病と
その対策
<成人病と生活習慣病 36巻8号2006年8月>
今日、航空輸送が発達しているので、飛行機を使った旅行や出張などの交通手段として、利用者が増えると考えられます。
ほとんどの人にとっては、健康上何の問題にもなることはないが、航空旅行に伴うストレスを過小評価したため、機内において既存の疾病が悪化したり、新たに病気を発症するケースがあります。航空旅行に伴うストレスとして、最も重要なのは、飛行機中の機内の特殊な環境です。
飛行機の機内は、地上と同じ環境ではなく、巡航中の機内気圧は、最大0.74気圧程度まで低下します。このため、既存の呼吸器疾患、貧血患者は、低酸素症を引き起こしやすくなり、心筋酸素需要が増加するために、心不全や虚血性心疾患は増悪する危険性があります。
また、機内湿度も取り入れている外気の湿度が低いので、様々な体の症状が現れてきます。飛行時間が長くなると相対湿度が20%以下となり、鼻や喉の粘膜の障害やコンタクトレンズによる角膜障害、脱水や静脈血栓を引き起こす可能性があります。
ベテラン客室乗務員に対して行った乗客の健康に関する訴えのアンケート調査結果によれば、吐き気?嘔吐、耳の痛み、一時的な意識障害(失神)で全体の71%をしめています。 しかし、これらのことは対策を立てることで予防、軽減をすることができます。例えば、角膜、上気道の粘膜障害の対策として基本は、十分な水分の補給です。角膜障害を予防するために、眼鏡を着用するか、頻回に目薬の点眼を行うことです。
A社員の性格と対処行動が職場のストレスに及ぼす影響
河村 代志也 秋山 剛
<産業医学ジャーナル 29巻2号 2006年3月>
職業性ストレス要因がストレス反応をきたす上で、個人要因である性格と対処行動がどのように影響するか調査し、その結果、職業性ストレス要因よりも性格のほうが、ストレス反応と強く関係していることがわかった。これを実証するために以下の実験を行った。
?職業性ストレス要因と、個人要因の性格と対処行動が、ストレス反応にどのような影響を与えているのか分析する。
?2.5年間のストレス反応の変化が、職業性ストレス要因、性格によってどうなるかを分析する。
性格の調査票としては、日本語版の信頼性と妥当性を検証した「メンフィス・ピサ・パリ・サンディエゴ気質自己質問紙TEMPS-A」、および、日本語版の信頼性と妥当性が検証されている「ミュンヘン人格検査MPT」を使用した。また、対処行動調査票としては、日本語版の等価性、信頼性および妥当性が検証されている「NIOSH職業性ストレス調査票GJSQ」を利用しました。
?の分析には、春に869名の調査データを利用し、職業性ストレス要因と性格および対処行動がストレス反応に与える影響を共分散構造分析を用いて調べました。
?の分析には、2.5年間を隔てて2回行われた390名の調査データを利用し、ストレス反応の変化を目的変数とし、性別、年齢、職位変化(管理職への昇格や非管理職への降格の有無)の影響を統制した上で、職業性ストレス要因や性格の変化を説明変数として、階層的重回帰分析を行いました。
<?の結果>
性格がストレス反応に与える効果の程度を示すパス係数は0.75と強く、一方、職業性ストレス要因がストレス反応に与える効果のパス係数は0.40で中程度であり、性格と職業性ストレス要因との間の相関係数は、0.48で中程度の相関が認められました。
性格へは、抑うつ気質(パス係数0.71)、循環気質(パス係数0.75)、焦燥気質(パス係数0.74)不安気質(パス係数0.81)の関与が強く、統合失調傾向(パス係数0.44)の関与は中等度であり、メランコリー性格(パス係数0.23)の関与は弱かった。
対処行動へは、情緒優先対処(パス係数?0.23)の弱い負の関与が認められたが課題優先対処(パス係数0.07)や回避優先対処(パス係数?0.22)の関与はほとんど見られなかった。
<?の結果>
抑うつに関しては表1(文献の表2)、職務満足感に関しては表2(文献の表3)に示した通りです。
表1
表2
4、選んだ論文の内容と、ビデオの内容から、自分自身で考えたことを、将来医師になる目で捉えた考察
<@の文献について>
この文献を読んで感じたことは、航空機による既病の再発や新たな病気になることがわかっているのに、なぜ、これらを防ぐための対策をもっと全面的に公表しないのか不思議でした。航空旅行に適していない状態の表(文献の863ページ)に載っているものを見て考えると、確かに気圧の変化があるので、乗らないほうがよいとわかるが、その他にある、「スキューバダイビング後24時間以内」というのは、インストラクターがきちんと、「今日は飛行機に乗らないでください」と教えてくれるならいいが、もし、何も言われなかったら乗る人もいるだろうと考えられます。しかし、飛行機内の気圧の変化を完全になくすことは無理なのであれば、万が一の事態に対応できるように、医師、看護師を搭乗させることも必要だと考えられます。しかし、すべての飛行機に医師、看護師を搭乗させるのは、なかなか難しいので、最低限、長距離の飛行時間を要する飛行機には搭乗させるほうがよいと考えられます。
旅行者血栓症には、深部静脈血栓症と急性肺動脈血栓塞栓症があり、深部静脈血栓症と急性肺動脈血栓塞栓症は、エコノミークラス以外の航空機利用者やバス・列車・船などの交通機関を利用した旅客にも発症が認められています。エコノミークラス症候群という名称はエコノミークラス以外では本症は起り得ない等誤解を生ずる危険性があるため妥当ではないと考えられます。旅行者血栓症の予防については、多くの深部静脈血栓症・急性肺動脈血栓塞栓症は既知の危険因子を有している旅客から発症しているが、少数ではあるが危険因子が認められない旅客からも発症がみられます。したがって、航空会社・旅行会社等は旅客に対して深部静脈血栓症・急性肺動脈血栓塞栓症が航空機内で起りうることについて旅行前に注意を促し、さらに、飛行中は旅客全員に体操ビデオ・機内誌等を用いて足の運動・水分の補給・ゆったりとした服装・過度の飲酒を避ける等の深部静脈血栓症の一般的な血栓予防法を航空会社は紹介するべきだと考えられます。
中等度以上の深部静脈血栓症の危険因子を有する旅客に対して旅行前に医師が薬物療法あるいは弾性ストッキング使用等の予防策を講ずることは極めて重要であります。したがって、医師又は医療従事者に対して、航空機旅行に伴う深部静脈血栓症・急性肺動脈血栓塞栓症の病態や予防等を医学雑誌・講演会等で広く紹介し、正しい理解を得る機会を作る必要がああります。
<深部静脈血栓症の危険因子>
「低危険因子」
40才以上、肥満、糖尿病、高脂血症、3日以内に受けた小外科手術(内視鏡的・肛門外科・皮膚科・眼科手術等)
「中等度危険因子」
下肢静脈瘤、心不全、6週間以内に発症した急性心筋梗塞、経口避妊薬を含むホルモン療法、真性多血症、妊娠・出産直後、下肢の麻痺、6週間以内に受けた下肢の手術・外傷・骨折
「高危険因子」
深部静脈血栓症・急性肺動脈血栓塞栓症の既往歴あるいは家族歴、先天性血栓形成素因、血小板増多症、6週間以内に受けた大手術(脳外科・心臓外科・整形外科・婦人科・泌尿器科手術等)、心血管系疾患の既往, 癌等の悪性腫瘍
等があります。
これらの症状、既病がある人は、きちんと医師の判断を聞いてから飛行機等の乗り物に乗るべきである。
<Aの文献について>
ストレスと聞くと周りからの刺激によって感じるものだと考えていましたが、この文献を読んでそれが間違いであることがわかりました。性格がストレス反応に与える効果は、職業性ストレス要因がストレス反応に与える効果よりもかなり大きいことがわかりました。現代の世の中は、仕事のストレスで鬱や自殺を図る人が多いですが、会社や周りの人は、人それぞれの性格をきちんと認識、理解することが大事であると考えられます。
人間の体は、ストレスにさらされると、まずショック状態に陥ります。そして、次に、抗ストレス性のホルモン(アドレナリンやノルアドレナリン、副腎皮質ホルモンなど)の分泌によって、そのストレスに対抗しようとします。この「生体の抗ストレス作用」がうまく働くことで、ストレスを軽減することができます。
さらに、つらい事実を少しずつ受け入れたり、現在の状況を正確に分析したりする「合理的な思考」と、実際の「問題解決行動」によって、ストレスを克服することができるようになります。
もし、このシステムがうまく働かないと、鬱になり、様々な症状が現れてきます。そのためにも、自分がリラックスでき、楽しめるような趣味等を見付けることが大切であると考えられます。
5、まとめ
今回2つの論文を読み、1つ目は機内で起こりやすい病気について、2つ目は性格がどのように職場のストレスに影響を及ぼしているか学ぶことができた。旅行者血栓症(エコノミー症候群)は、飛行機に乗っているときは自覚症状がないのでとても恐ろしい病気であるので、きちんと水分を取り、定期的に動くことを忘れないようにすることがシンプルかつ重要なことだと思います。この他の対策としては、飛行機の座席の間を広くし、ゆったりと座れるように対策を講じるべきだと思います。